この照らす日月の下は……
60
キラ達の行方がわからない。その事実にギナはいらだちを隠せないようだ。
「カナードが駆けつけたはずだ。おそらく無事であることは間違いないであろうな」
ミナはそんな彼をいさめるように言葉を口にする。
「だが、カガリのことは知らぬのであろう?」
あのバカ娘、とウズミのようなセリフを口にする片割れにミナは苦笑を禁じ得ない。
「……キラのところに行ったに決まっておる」
本物のバカが鬱陶しくなったのだろう、とその表情のまま付け加える。
「あの二人はどのようなことがあろうと引き合うからの。間違いなく一緒であろう」
バカのせいで一緒にいることが出来ないだけだ。それはギナもわかっているのだろう。
「やはり、セイランの力をそいでおくべきだったか」
ギナが低い声でそうはき出す。
「今からでも遅くはあるまい」
言外に『好きにしろ』とミナは笑う。
「ただし、キラ達に迷惑がかかるようなことはするなよ?」
念押しするように付け加えれば「当然だ」と言う言葉が返ってくる。
「あれは戦いにはむかぬし、戦わずともいいからの」
戦いの才能があるのと向き不向きは別問題だ。そうギナは付け加える。
「カガリは才能は普通だが、非常にむいておる。カナードはその両方を兼ね備えておる。だが、キラは他人を傷付けられまい」
相手を傷付けると同時に自分が傷つく。そして最後にはぼろぼろになってしまうだろう。
それがわかっている以上、彼女に戦うすべを与えるつもりは全くない。
だが、それをよしとしない者達もいるのだ。
「とりあえず失点を調べ上げてちくちくとつつくか」
マスコミに流すなりネットで拡散するなりして相手の足下をすくおう。そうギナは言う。
本当に、こういうときの彼は実に楽しそうだ。
「任せる」
これならば、間違いなくセイランがしばらく動けなくなるように画策してくれるだろう。その間に自分はこちらに有利になるような状況を作ればいい。
「こういうときに双子は楽だな」
同じことを考える、とミナは笑う。
「さて……ついでにキラの無事を確認できないか、試してみるか」
カナードが側にいれば必ずキラ達をシェルターに連れていったはず。その記録はほぼリアルタイムでオーブの中継基地に送られるようになっているのだ。それを確認すればいい。
「頼めるな?」
視線を移動させ、側に控えているソウキスの一人にそう問いかける。
「了解いたしました」
彼はそう言うとそのまま行動を開始した。
「彼等の存在を知れば、あの子は悲しむな」
地球軍に利用され、必要がなくなったと判断されると同時に捨てられたコーディネイター。そんな存在はキラに知らせたくない。
それでも、ここに連れてくれば嫌でも目に入るだろう。
「だが、それは今考えることではないか。その時はその時だな」
そうつぶやくとミナは立ち上がる。
「ウズミに連絡を。情報を共有しておかねばならん」
言葉とともに彼女は歩き始めた。